対抗対抗

自然農法で栽培した菜の花から作るなたね油

昔ながらの製法にこだわり、安心、安全、おいしいをお届けします

菜の花プロジェクトについて

菜の花で作る循環型社会

 1998年滋賀県愛東町(現東近江市)で始まった取り組みです。琵琶湖の環境悪化に対して、合成洗剤の代わりにせっけんを使おうという運動が高まりました(せっけん運動)。この「せっけん運動」に連動して廃食油から石けんをつくる運動が高まりますが、 「びわこ条例」(琵琶湖の富栄養化を防止する条例)の制定により、洗剤メーカーも「無リン合成洗剤」の販売を始めます。その結果、一時は7割を超えた石けんの使用率が急速に低下、つくった石けんが余ってしまう事態となりました。 廃食油の別の用途を探る中で、バイオディーゼル燃料の先進地ドイツの取り組みが注目されました。それは、菜の花を遊休農地などに植え付け、観光や油などに利用し、その後廃油をバイオディーゼル燃料(BDF)に再利用するというもの。廃食油のリサイクル活動を、この循環型社会を目指した取り組みに発展させてきたものが、「菜の花プロジェクト」です。その理念は全国に広がり、多くの団体(現在124団体)が参加し、展開しています。「菜の花プロジェクトin甘楽」もその一員です。

 このプロジェクトの特徴は、中央の組織から各地の会に指示を出して運動することではない、 「地域主導、住民イニシアティブ」の取り組みということです。菜の花プロジェクトの理念に賛同した団体などが、 その地域ごとの実情に応じた形での取り組みを、行政とのパートナーシップを取りながら行っており、 年に1回「全国菜の花サミット」において全国での取り組みの経験交流をおこなっています。遊休地対策というよりもBDFづくりを通しての 環境保護という面に主眼が置かれている印象も受けます。

 遊休農地に菜の花を植え、ナタネを収穫し、搾油してナタネ油に。 そのナタネ油は料理や学校給食に使い、搾油時に出た油かすは肥料や飼料として使う。廃食油は回収し、石けんや軽油代替燃料にリサイクルする。そして大気中に排出されたCO2は菜の花を栽培することで吸収される。その狙いは、エネルギーを地域内で循環させることです。 菜の花プロジェクトは、地域にある資源を利用してそれをエネルギーに変え、そのエネルギーを地域内で利用するという資源循環型の地域づくりをめざしています。 さらに、養蜂との連携、菜の花の観光利用など、地域内のより広く深い資源循環サイクルへの展望も開かれています。

 私たちは甘楽町においてこの取り組みを行い、農業、環境、地域のあらゆる分野の方々と手をたずさえ、 さらに明るく元気な甘楽町を実現することを目指し、「菜の花プロジェクトin甘楽」を設立しました。

菜の花プロジェクトを行うきっかけ

 テレビなどの報道で滋賀の菜の花プロジェクトの取り組みを知り、天ぷら油で車が走るということに素晴らしさを覚えました。 かたや、後継者不足、農業の厳しい経営環境の中で、放棄される畑が増えていることを憂えて、いつか甘楽町でも菜の花プロジェクトが できたらいいと考えていたところ、平成17年度からの群馬県蚕糸園芸課の事業「菜の花エコプロジェクト推進モデル事業」が立ち上がること を知り、早速「菜の花プロジェクトin甘楽」を発足させて応募しました。

 集まってくれた方々は私の旧知の面々で、いづれも町づくりや自分の仕事、さらに地域での活動に意欲的な方達ばかり。 設立総会は16名の参加でした。

群馬県内の菜の花プロジェクトに取り組む他の団体

 甘楽町以外に「菜の花エコプロジェクト推進モデル事業」に応募し、取り組んでいる団体は下記の通りです。いずれの団体もそれぞれの地域で その規模に応じた取り組みを行っています。

・渋川市子持地区 行政主体でナタネの栽培、廃油の回収からBDF製造、給食配送車への利用。

・高崎 NPO法人 鼻高町をきれいにする会 150a 地域の住民主体で行政とのタイアップを行いながら、菜の花栽培、ナタネ油の製品化、地域の学校や幼稚園でのナタネ油の提供など。

・中之条町 100a 行政主体でナタネの栽培から廃油の回収、石けんづくり、小学校での環境学習など。

・太田地球環境を守る会 50a 菜の花の栽培、油の試作、BDF試作、石けんの製造など。

・猿ヶ京ネットワーク 219a 温泉地の旅館をまきこんで、景観づくりとともに菜の花栽培、油の製造、BDFの試用試験。この他に榛東村長寿会が平成20年に参加予定

 さらに補助事業としてではなく、環境アドバイザーや各地で菜の花プロジェクトを取り組んでいる団体が多数あり、群馬県は草の根の菜の花プロジェクトが多数存在します。全国的にも注目に値すると言えるでしょう。

イメージ・新聞記事

群馬県甘楽町の所在

甘楽町は、群馬県南西部に位置し気候温暖野菜、コンニャク、椎茸、酪農など、かつては農業主体の町でした。現在は近隣に勤務する人が多いです。

平成の大合併の動きのなかで、住民アンケートの結果、自立を選び、町当局と住民が協力しながらのまちづくりを推進しています。

甘楽町の遊休農地の現状

耕地面積(ha) 平成7年1320ha から
平成17年1090haに減少
(230ha減少)
農家戸数
938戸 から 52戸に減少
専業農家 171戸 から 153戸に減少
兼業農家 594戸 から 337戸に減少
農業就業人口 1609人 から 1029に減少
第42〜53次 群馬農林水産統計年報

尚、農振農用地遊休面積は 135.6ha となっている

このデータからも甘楽町での遊休地の広がりが見て取れます。

甘楽町の遊休農地の現状

どんな人が参加しているのでしょうか
メンバー写真

平成19年4月 菜の花のお花見会

菜の花栽培年間サイクル

ここからは実際の菜の花の栽培について報告します。 まず下図のようなサイクルが最も理想的な栽培サイクルです。しかし畑には場所によって特徴があり、肥料の量や石灰量、菜の花の栽培に適した畑と適さない畑等さまざまなくせがありますので、その畑に適した栽培方法を判断することが必要になってきます。

6月 収穫後、畑の土起こし・除草 2月 下旬に中耕、除草
7月 たい肥入れ、畑の土起こし・除草 4月 除草
8月 苦土石灰まき 6月 特に種のできる雑草を取り除く
中旬以降に生育を確認して収穫
9月
〜10月
菜の花の種まき(9/20以降〜)高畝作り(田んぼ跡)、種まき 7月 乾燥・ふるい・とうみ・袋詰め
8月 精油・ビン詰め・ラベル貼り
9月 油の販売開始

菜の花プロジェクトin甘楽・菜の花栽培の行程と行動

1 耕作を放棄した畑をトラクターの安全を確保するため、畑の境界辺りを草刈り機で刈り、トラクターで耕作してきれいにします。 ..more
2 種まき前にもう一度トラクターで土を起こしておき、種まき当日を迎えます。最適期間は9月20日頃から10月上旬です。約20人参加 ...more
3 品質の良いナタネをたくさん収穫するためには草取りが欠かせません。遊休地であった畑にはたくさんの雑草の種が落ちています。 ...more
4 遊休地の中には田んぼだった畑も多いのですが、3年間菜の花を作ってみて、水はけの悪い田んぼは不向きだということがよくわかりました。 ...more
5 12〜1月にかけて中耕、除草作業を行います。近年は多くのボランティアの方々にご協力をいただき、作業後は参加者の皆様とカレーを食べて打ち上げをすることも。  ...more
6 早い花は2月下旬、遅くとも3月中旬までには菜の花が咲き始めます。4月にはお花見会を行ってプロジェクトの協力者の皆さんと開花の喜びを分かち合っています。 ...more
7 開花から満開までは1ヶ月少し、満開から収穫まで約2ヶ月程でした。
1作目は70aで1.05トンの収量
2作目は1.4aで1.05トン
3作目は1.9haで2.6トン ...more
8 収穫したナタネは倉庫に集めふるいをかけてから天日干しにします。 ...more
9 乾燥したナタネはまだたくさんのごみや、雑草の種が混じっているので、最後にとうみをかけてゴミを飛ばします。 ...more
10 袋詰めを終えたナタネは埼玉県上尾市にある、ヤマキ食品株式会社で油に精製してもらいます。 ...more
11 ヤマキ食品会社では、昔ながらの搾油製法にこだわった良質のナタネ油が作られています。 ...more
12 ヤマキ食品からはナタネ油は18リットル缶の状態で納めてもらい、そこから後の瓶詰め、ラベル貼りは会員の手作業で行っています。 ...more
13 甘楽町物産センター、JAの直売所、酪農家アイスクリーム工房、地元のパン屋さんなどに置いて販売。昔ながらの香り高い油として好評で、物産センターでは月40本程度の売り上げとなっています。 ...more

内容の一部は活動開始当初の状況を元にご紹介しておりますので、現在の状況と相違する点もあります。ご了承下さい。

かんらの里・菜種油の採算性について

 ナタネの栽培から収穫、油の搾油と述べてきましたが、肝心なのは、この事業が果たして多大な労力を費やした後に採算に見合った事業になるかということです。結論を申しますと、ナタネ油だけで採算を取り継続して事業としてゆくのはなかなか大変だと言わざるを得ません。第一に良質のナタネを収穫するためには、土づくりの際の肥料代、日頃の畑の管理のためのトラクター作業労賃、燃料代、ボランティア作業時の昼食飲料代、追肥の際の肥料代等々、少なからず経費がかかります。人手に対する労賃は現在はボランティアに支えられているわけですが、それでも経費はかかってしまいます。ポイントはいかに手をかけずに収量をあげるかですが、2作目はあまり手をかけずにいたら結果収量は10a当たり100kgしか収穫できませんでした。

油だけで採算をとろうとする場合2ha以上の畑に栽培し、経費はなるべく抑え、さらに10a当たりの収量150kgが必要となってくる計算になります。

「仕事は楽しく、遊びは真剣に」という合い言葉のもと、菜の花プロジェクトin甘楽は現在まで継続中です。資源循環の甘楽町を目指して菜の花の栽培から搾油、販売、BDFの製造、活用と取り組みの中身は多岐にわたっています。

現在は赤字経営の中、人の善意に支えられて運営している状態ですが、菜の花プロジェクトのことを聞いて、「うちの畑にも菜の花を植えたい」「小学校で子どもたちと菜の花を育てたい」などの声が少しづつ聞こえてきます。人のつながりは財産です。会員の和をさらに広げ、たくさん油をとって、たくさんの感動を共有できたらこの事業は成功したと言えるのだと思っています。もちろん黒字で。