菜の花の栽培

種まきの9月下旬から刈り取りの6月中旬まで、およそ9ヶ月の間、
菜の花は畑にいてくれますので、非常にサイクルが長いです。
従って畑を雑草にしないということにおいてはとても適した作物といえます。


  1. step 1 荒れ地を開墾〜土づくり〜種まき

    荒れ地の開墾
     草が生い茂っている畑は大型のトラクターで一気に土を起こせれば良いのですが、私が使っているトラクターは20馬力のトラクターなので、何度もロータリーを掛けなければきれいな畑になりません。

    土づくり
    堆肥は、知り合いの酪農家から堆肥がもらえることになったので、今は牛の堆肥を使っています。
    ダンプで堆肥を畑に落としたあと、バケット付のトラクターで広げています。最初は人海戦術でバケツで人力作戦をやったこともありましたが、畑が増えすぎて人の手では無理になりました。
    畑によっては苦土石灰を一年おき位に入れています。

    種まき
     種まき時期は9月中旬から10月中旬の1ヶ月以内と言われていますが、例年9月20日過ぎに行っています。トラクターで起こした後の畑に長靴で90センチ幅、30センチ間隔でくぼみをつけて、その中に菜種を3粒から5粒落として行きます。

    毎年少しづつ畑が増えて、1作目は写真のように5ヶ所0.8haだったのが6作目の今年は何と、27ヶ所3.3haに広がっております。
     毎年20名くらいの方が参加してくれまして楽しく作業してます。畑は結構柔らかくて長靴が埋もれるところもあるのですが、中には革靴とか、運動靴でやって来た方も過去にありました、私も種をまきたいという方はぜひ長靴をはいて来て下さい。
     種まきの後は、手作りのカレーを婦人部の皆さんが用意してくれて、みんなでいただき、楽しい一時を過ごしています。





  2. step 2 発芽〜除草・中耕〜開花〜菜の花まつり〜収穫

    発芽
    発芽 そしてご覧の通り1週間から10日くらいで発芽します。

    除草・中耕
    除草・中耕 20センチくらいに育って来たところで、草取りと中耕をします。
    耕耘機や手作業で草取りをしていました。2年目からの畑にはご覧の通り、畑一面に菜の花が生えてきますので、それをトラクターのロータリーの歯を真ん中10本位をはずして中耕しています。
    この作業を終えると一段落というところで、11月下旬〜翌年の2月くらいはあまり雑草がないので、私は本業にいそしみます。 3月になるとまた雑草が伸び始めますので、手作業で草取りを行いました。

    開花
    一年で一番ときめく頃です。3月から4月にかけて畑一面に菜の花が広がります。
    今年、甘楽町ふるさと景観賞をもらっております。特に一番上の小幡桜並木の50aの畑がおすすめです。
    武者行列の頃ですが、桜の満開と菜の花とのコラボレーションが見られるので、ぜひ小幡に来て下さい。 お昼にはぜひ物産センターに寄ってもらってお金を使ってやって下さい。町長が喜びます。

    菜の花まつり
    4月の第3土曜日、さくらマラソンの前日に新屋駅と福島駅の中間当たりの線路に面した、浅間堤公園で、菜の花まつりを開催しています。
    最初の3年間は、内々のお花見会と言うことでアットホームにやっておりましたが、一昨年から広く町内外に呼びかけまして、農と食、環境を考える集いということで500名以上の方が集まってくれました。
    今年は何と前日の4月16日金曜日が40年ぶりの雪で、天は我らを見放したかと思ったのですが、当日は何とかはれて、足元がぐちゃぐちゃの中を、頭のなかもぐちゃぐちゃ、服もぐちゃぐちゃにしながら、デリコル始め町内外のコーラスや、音楽グループの発表、環境カウンセラーの皆さんの話や、生協パルシステムの皆さんの参加で模擬店や野菜の直売もにぎやかに楽しみました。来年も4月の第三土曜日には行いますので、ぜひ遊びに来て下さい。

    収穫
    花が終わり1ヶ月半位しますと、さやが茶色くなって枯れてきます。種が黒く実って収穫です。たくさん 作るには、いかに収量を上げるかにかかってきますので、収穫時期の10日間程は真剣勝負です。
    良い油をたくさん手作業で収穫体験も行っていますが、20人近くの人間が半日かかって、取れたのが20キロです。ですから刈り取りはほとんどが汎用コンバインを使って刈り取ります。上野村が蕎麦の収穫用に持っているので、それを借りてきて作業をしております。収量はおおむね10aあたり150kg取れればいい方です。
    畑によって差があり、特に田んぼのあとで水はけの悪い畑は湿害が出たりで生育が悪いです。昨年は3トン半位いとれたのですが、今年は2.6トンしか取れませんでした。種の生育時期の春が寒くて、他の野菜なども生育が悪かったのと同じだと思います。




  3. step 3 菜種の乾燥から精製〜夏期の除草〜油の完成と販売開始〜油の製造工程

    菜種の乾燥から精製
     収穫した後の菜種は大きなビニールハウスの中で乾燥させます。応援してくれる農家の好意で格安で貸してもらっています。
    下にシートを敷いて、その上に菜種を広げ、時々撹拌しながら乾燥させます。7月の猛暑の中であっと言う間に乾燥してしまいますが、作業する人間も乾燥しそうです。これからが一番大変なんです。
     ゴミとかが混じった菜種をふるいにかけて、さらにとおみをかけて精製して袋に詰めます。今年は7月5日に15人くらいで作業しました。何と言っても猛暑の中で、しかもハウスですから、頭がくらくらしてきます。
    とおみも以前は手回しのものも使っていましたが、作業後に5キロぐらいやせるので、身が持たないから電動のものを使っています。袋詰めにしたなたねを積み上げると、皆さんの汗と苦労の香りでいっぱいです。これで油になっていくらになるんだという皮算用も禁じ得ません。

    夏期の除草
    これで一段落で、あとはヤマキ食品に搬入して油ができるのを待つばかりです。
    だといいんですが、7月から9月の畑には猛烈な勢いで雑草が生えてきますので、これを放置しておくと、次の作付けに悪いので、なるべくこまめに町内25ヶ所の畑をトラクターで回りながら、生えた雑草を畑にすき込む作業をひたすら夏の暑さの中で行っています。
    今年の猛暑にはとにかくまいりました。午後は命の危険を感じたので、午前中に毎日毎日汗だくになりながらトラクターに乗り続けておりました。

    油の完成と販売開始
    ヤマキ食品に菜種を搬入してから1ヶ月程で油が出来上がってきます。
    私たちはこの油を「甘楽の里の菜種油」と呼んで販売しております。販売に協力してくれているのは主に甘楽町物産センター、JA食彩館、その隣にあるメンバーのやっているアイスクリームやさん、じぇら21、それと町内のお店やさん、菓子とかパンやさんです。富岡市ではお勝手市場さんとかにも協力いただいておりますが、一番は、ボランティアで参加してもらっているメンバーが5本、10本と持っていって、友だちに広げてくれる。またお歳暮用に使ってくれるという形で、昨年は大小の瓶合わせて、1600本位が完売しております。

    油の製造工程
    これは油の製造工程ですが、ヤマキ食品では、昭和35年製の機械で圧搾しぼりです。
    製油会社によって、圧搾一番しぼりをうたっているところでも、製造を早めるために木の灰を使ったり、酢、酢酸ですね。
    そういうものを使ったり、色々手を加えているところもあるようですが、私たちの菜種油は、何も足さない、何も引かないということで、絞った後自然におりを沈殿させ、不純物を濾過して取り除いている昔ながらの油です、最初に使った時は独特の香りにびっくりする人もありますが、使ってゆくうちに一般のスーパーで売っている油にない風味とか胸焼けしないとか、そんな良さを理解して、何度も買ってくれるリピーターになってくれる人がたくさんいます。
     私たちの油と一般に流通しているキャノーラ油の違いを話させていただきますと、 まず材料ですが、日本の菜種の国内自給率は0.3%だと言われています。数少ない昔ながらのメーカー以外の油はカナダ・オーストラリア・中国などからの輸入です。
    しかもそのほとんどが遺伝子組み換えなたねです。
    この遺伝子組み換え菜種が港からメーカーに輸送される途中にこぼれて、発芽し、在来の菜種や、ブロッコリーなどと交雑しているという事例がありまして、とても心配しております。それに対して私たちのものは純国産の搾油専用に開発された、ななしきぶ、これは滋賀原産で温暖地域向き、きざきのなたね、これは青森原産の寒冷地向き品種です。この2種を自分たちで栽培しています。
    まあ、私の乗っている軽トラックにも菜種がいっぱい散らかっていますから、ここら辺を走っていて種をまき散らしている可能性有りですが、純国産ですし、どこかアスファルトの切れ目から伸びている菜の花を見つけたら、それは私が散らかした物だと思ってご容赦下さい。

  4. step 4 油の製法について・遺伝子組み換えについて

    油の製法について
    機械圧搾搾りです。一般の油は、ノルマルヘキサンという有機溶剤で菜種油の成分を抽出しています。確かに一滴一滴気長に油が出てくるのを待つより、薬品を使って一気に大量生産すれば安価に油ができると言うことでしょう。
     絞った後には図のように様々の添加物を加えて、無味無臭の透明な一見きれいな油に仕上がるというわけです。
     甘楽の油は何も入れていませんので、昔ながらの香りがしますし、うす茶色で透明でありませんし、最初にぶくぶく泡がたくさん出ます。そのかわり、オレイン酸やリノレン酸といわれる不飽和脂肪酸とよばれるものがたっぷり含まれています。不飽和ということはつまり酸化しないということで、人間の体内で酸化によって作られる脂肪酸、なんだと思いますか、コレステロールをためないと言うことになります。
    ちなみに不飽和脂肪酸に対して飽和脂肪酸というのはほ乳類なんかの動物性油脂のことです。  今日はこの話が終わった後搾油の実演コーナーをやりますが、そこで特別に、甘楽の菜種油、小瓶を先着100名様にプレゼントいたしますので、運良く手に入れられた方は、オレイン酸の効能を実感してみてください。そしてよろしかったらじぇら21で売っていますのでよろしくお願いします。

    遺伝子組み換えについて
     遺伝子組み換えというのは、例えば世界ベストセラーの除草剤でラウンドアップというのがあるんですが、大腸菌の中にこの除草剤に対して死なない、耐性を持つものがあり、その大腸菌なりバクテリアの遺伝子のその耐性部分を切り取ってきて、菜種の遺伝子に組み入れるというすごい技術な訳です。これには賛否両論あるのですが、まず賛成論の特徴は、人類の人口が増え続け、ますます食料の安定確保が重要となっている中で、遺伝子組み換えによって効率かつ安定的に食料を作れるのだというのがその理屈です。
     一方反対論の方は、遺伝子を組み入れるときに、直接遺伝子に100%組み入れることはできず、細胞に注入するだけで、その遺伝子がどこに組み入れられるかは偶然に頼っているから、予想もつかない毒性を持った作物ができる可能性があるということです。
    さらにもしもとんでもないものができてしまったら、遺伝子組み換え事故は、生物の事故ですから、自然に増殖を繰り返すので、取り返しがつかないということになります。そしてアメリカで実際に遺伝子組み換え食品を食べた人が中毒を起こすという事例もあったとしています。
    光るくらげの遺伝子を動物の猿に入れて光る猿を作るという実験もあったそうです。

     私たちは強硬な反対運動を行うという考えはありませんが、食料の安心安全を何より大切にしたいという考えでいますので、少しでも心配がある遺伝子組み換え菜種を今までも使っていませんしこれからも使う考えはありません。
    確かにラウンドアップをまいて、きれいに雑草が枯れて、菜の花だけが育って行くというのはある意味夢のようですが、それをしたらおしまいよということであります。

     実はこのラウンドアップを作っている会社はアメリカのモンサント社という会社だそうで、遺伝子組み換え作物の開発も一生懸命やっているそうです。世界の遺伝子組み換え作物の80%をこの会社が開発し特許を持っていると言うことです。
     一方では除草剤を作り、それに対して耐性を持った作物の種も作るというマッチポンプ的なやりかたですね。さらにおどろくべきことにこの会社の遺伝子組み換え作物を栽培した翌年に、農家が、出来た種で次の栽培をやろうとすると、その種はモンサント社の特許だから作ってはいけないと言って、膨大なお金を要求するということをやっているそうで、これもひどい話だと思います。

    先頃名古屋で行われたCOP10、生物多様性に関する国際会議で、地球の種の保存に対してたくさんの国が参加して議論を進め、困難な中でも地球の命を守ろうと言うことで話がまとまったようですが、この会議に、遺伝子組み換えの会社をたくさん持っているアメリカは参加していないのですね。
    考えれば参加できるはずもないわけですが、世界の良識的な声がアメリカに伝わって、遺伝子組み換えの禁止や生物の多様性に光が見えて来ることを願わずにいられません。

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