「子どもに生き方を示す」
-恩師の「教育」-
平成24年12月12日(水) 上毛新聞オピニオン21 掲載

当団体「あそびの市場実行委員会」代表の記事が掲載されました

【上記本文です】

これは私の人生をよいものにしてくれた「恩師」のお話です。
 とある学校の、とある担任の先生。気さくで、いつも笑顔で、
冗談を言うと冗談で返してくれて、みんなにこにこ楽しいクラス。
そんな先生が私は大好きでした。
 その先生がある日、遅刻をしてきました。私はいつものノリで
「あー、先生が遅刻したー!先生が遅刻したら怒れないよね。
おれたちも明日から遅刻してもいいんだよね!」そう叫びました。
「またそういう冗談を言って!」と、にこにこしながら軽く返して
クラスが笑いに包まれる・・・そう思っていました。
 でも、その日は違っていました。先生はその場でポロポロと
涙をこぼしてしまったのです。大好きな先生を泣かしてしまったことで、
おろおろしてしまいました。「あーこまつが先生を泣かした!」
まわりからそんな声が聞こえてきました。その直後、先生は
「ごめんね。なんでもないから。それじゃ、授業をはじめます」
そう言ってすぐに授業をしました。
 その日の放課後、先生は誰にも気づかれないように私を別室に
呼んで、こんなお話をしてくれました。
 「今朝はいきなり泣いちゃってごめんね。いろいろ理由があるんだけど、
あなたにはきちんと話しておきたいと思ったの。実は今朝、先生の
お母さんが倒れてね。それで朝から病院に付き添ったりしていて遅刻したの。
他の先生たちは休んでもいいと言ってくれたけど、先生はみんなのところに
行きたいと思ってたから、学校に来たの。でも、そんな時にかけられた
言葉があなたの今朝の言葉で・・・思わず泣いちゃって・・・
ごめんね。あなたがいい子だってことはよくわかっている。
人を傷つけようとか、そういうことを考えていないってのはすごくよく
わかっている。でもね、人って時と場合によっては同じ言葉でも
ショックを受けたりすることがあるの。あなたにはそうしたところまで
配慮できる人になってほしい」
 私は幾百、幾千の言葉よりも、この先生の「生きざま」から学ぶことが
できました。「自分が大変な時に人のことを考えられる。そういう
大人になりたい」と。
 仕事柄「こどもに○○させたいんですが」という相談を受けることが多々
あります。しかし、そうした【人を変えようとする】やり方では子供たちは
変わりません。子供たちが【ああいう大人になりたい】と思ってくれる
自分になることが一番の教育ではないでしょうか。みなさんは自分の過去を
振り返ってみた時、そう感じませんか。
 「子どもたちが大人を見て希望を持つ」-そんな世の中にしていきましょう。
それが「大人」の役割ではないでしょうか。